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2005年12月8日朝刊(ミラノ:Andreolahotel にて) |
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スカラ座の新シーズン開幕 音楽の友 2006年2月号
周知の通り昨シーズン途中でムーティが去りフォンターナも辞任して、リスネル体制になってから、この12月7日のシーズン開幕がスカラ座にとっては本当の再出発になる。演目はモーツァルト《イドメネオ》。2006年の生誕250周年を見据えての選択である。だが最も注目を集めたのは、何と言っても指揮者のダニエル・ハーディングであった。まだ30歳そこそこの若者がスカラ座の開幕の指揮台に立つなどというのは、なんとトスカニーニ(当時31歳)以来だという。それだけでも大いに注目されるのに加えて、昨年のゴタゴタから立ち直ったことを内外に示さなければならない重要な機会とあれば、彼の肩に、いや棒にかかるプレッシャーたるや察して知るべしである。それだけに、本番が近づくにつれて練習にも異様なほどの熱気があったという。しかしそれもただの緊張ではなく、楽員や歌手たちの間には、共に音楽を作る喜びが溢れていたそうだ。つまり、皆がこの若い熱血漢の指揮者を迎えて、スカラ座が新しい歴史を刻み始めたことを感じていたのである。本人も新聞のインタヴューで「若きトスカニーニのようだって? 僕はもっと優しいですよ!」と答えている。
昨年のムーティとの関係が悪化し辞任の原因にもなったオーケストラの楽員たちも、ハーディングには好意を持っているようだ。それは、彼がただ「熱い」だけでなく、その若さにもかかわらず、《イドメネオ》のような複雑なオペラをどのように扱うかについて、はっきりとしたアイディアを持っていることであった。現時点で素晴らしいし、将来大いに期待されるということだ。すでに彼はイタリアのメディアからも「Tシャツで稽古をするマエストロ」として紹介され、それがまた新鮮な印象を与えている。聴衆も、ムーティが去った後の英雄の出現を願望しているのだ。今回の成果を見る限りでは、彼はその資質を十分持ち合わせていると言えよう。序曲が終わった時、その洗練されたヴァイタリティに感心して隣に座っていたイタリア人の友人に「このまま成長すればアバドのようになるぞ」と漏らすと「そりゃそうさ、アバドの弟子だからね」という答。あ、そうだったか、とようやく気づいたのだった。
さてこの《イドメネオ》、物語はそれほど複雑ではないが、音楽的には困難な作品だ。特にイドメネオ役のテノールには大変高度なテクニックが要求される。この難役を演じたスティーヴ・ダヴィスリムは、技術的には不安を感じさせず見事に最後まで歌いきったが、声の質にはやや芯がなく、好みの別れるところだろう。イドメネオの息子イダマンテ役のモニカ・バチェッリは、久しぶりにスカラに登場したのではないか。女声の男役という難しさをうまく克服していた。またその恋人役のカミラ・ティリングは、声はそれほどでもないが、ドラマの中での役割をしっかりと捉えていた。
ということで全てがよかったかというと、残念ながらそうではなく、リュック・ボンディの演出にはブーイングも出た。クレタ島を舞台にした劇は、すべて何もない浜辺で展開し、舞台装置も始めから終わりまでほとんど変化がないので、やはり飽きてしまう。また衣装も現代風というか、1950年代のような、今ひとつはっきりしないデザインである。それでも12分間の拍手があったのは、スターはいないが充実しよくまとまった歌手たちの努力と、ハーディングの魅力ある音楽のお陰であった。「瑞々しい」とか「溌剌とした」といった形容が似合う音楽であった。そのリズム感覚はロックからインスピレーションを受けているという楽員もいるが、まずは好スタートのスカラ座、シーズンの成り行きに注目したい。
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2005年12月8日朝刊(ミラノ:Andreolahotel にて)
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2006年10月28日(土)放映 放映時間 00時30分23秒〜03時18分53秒
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収録: 2005年12月7日, ミラノ・スカラ座 (イタリア) |
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ミラノ・スカラ座 |
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歌劇「イドメネオ」 全3幕 ( モーツァルト ) |
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クレタ王イドメネオがトロイとの戦いで死んだと思われていたので、 王子イダマンテは王座についてクレタを治め、トロイとの和平を図ろうとした。
捕らわれの身になっていたトロイの王女イーリアを解放し、二人は相愛の仲となる。
その一方で、アルゴスの王アガメムノンの王女エレクトラはイダマンテに恋をしていた。
そこへイドメネオは、海神ネプチューンに、最初に出会った人間を捧げる約束により命を助けてもらい、
荒海からクレタの浜辺に帰る。そこで彼が最初に出会ったのは息子イダマンテだった
第1幕,
第2幕 |
: |
00時30分23秒 〜 02時03分13秒 |
第3幕 |
: |
02時07分43秒 〜 03時18分53秒 |
イドメネオ (クレタの王) |
: |
スティーヴ・デーヴィスリム |
イダマンテ (イドメネオの息子) |
: |
モニカ・バチェルリ |
イリア (トロイア王の娘) |
: |
カミラ・ティリング |
エレットラ (アルゴス王の娘) |
: |
エンマ・ベル |
アルバーチェ (イドメネオの親友) |
: |
フランチェスコ・メリ |
祭司長 |
: |
ロビン・レガーテ |
海神の声 |
: |
エルネスト・パナリエルロ |
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合 唱 |
: |
ミラノ・スカラ座合唱団 |
管弦楽 |
: |
ミラノ・スカラ座管弦楽団 |
指 揮 |
: |
ダニエル・ハーディング |
[ 収録: 2005年12月7日, ミラノ・スカラ座 (イタリア) ]
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